Ⅵ 医療法人の事業承継

医療法人の事業承継


1.医療産業の構造増変化

 医療設備は医療機器の進化に伴い複雑かつ高額になってきた。一般の開業医でも新規に開業しようとすれば相当の初期投資を要する時代になった。特に病院医療はレセコンの導入で保険請求事務がデータ送信となり、検査機器、デジタルレントゲン、エコー、パックス、CT、MRI、内視鏡手術機器、ダビンチ等々高額の新鋭機器が導入される装置産業と化してきた。

 一方で患者サイドの医療リテラシーも向上し、自分の病気に関する知識、情報も格段に上がってきたため、患者側も新鋭の医療機器を揃えている医療機関への紹介を強く望み、それを導入していない医療機関にはいかないという傾向も見られる。かって、CT、MRIのない病院なんて遅れているのでは!という風潮が一時期あったし、最近ではダビンチの導入を遅らしたため医療水準は高いにもかかわらず、手術件数が減少したということも起きている。

 一方、日本の人口構造の変化が医師の充足にも影響を及ぼしている。昭和22年生~昭和25年生の団塊の世代とその周辺の年齢層が大量に退職時期を迎え、開業医の分野ではまだまだ現役で活躍している医師もいるので若干のタイムラグはあるものの、特に中小病院での中堅医師の採用は非常に困難になっている。


2.医療法人のM&A

 売り手となる医療機関の体質が大切な問題となる。買い手としては買収後円滑に運営していけるのかというのが最大の関心事である。院長、理事長の技量、経営手腕が非常に大きく貢献しており、代表者が交代して後継医師が承継した場合患者が付いてこない事態が想定されるようだと買い手としては見送らざるを得ない。高収益優良病院の収益構造がどのようになっているかを分析しておく必要がある。M&Aでの事業承継を考えるのであれば、数年前から病院の組織、人事を重視して人材の確保に力を入れ、院長が抜けても病院として十分な医療サービスが提供できるような体制を構築しておく必要がある。とくに最近は医師、看護師等の人材を集めにくい時代になってきているのでハード面の充実だけでなく、優れた人材で組織されたスタッフの充実した病院の方が高い評価が得られる。

  あとは一般のM&Aと同様で、不要不急の不動産を処分する。不良在庫を持たない、不良債権、不良債務を整理してスリムなB/Sとしておくおことである。

 M&Aの手法としては殆どが出資持ち分の譲渡によって行われるのが実務である。


3.一人医師医療法人のM&A

 一人医師医療法人のM&Aにおいては、買い手が医療法人か、個人医師かによってスキームが異なってくる。医療法人による買収であれば、営業権の償却が可能であるから、次のような一般的な算式で買収価額の叩き台を提示することができる。

  譲渡価額=時価純資産価額+営業利益の3年~5年分


  理事長の退職金と不要資産の調整で純資産を減らし、買収額を抑える、買い手側にとって営業権が何年で償却できるかもM&Aの重要なポイントである。商権である患者がどれだけ新院長に付いてくるか工夫を要するところである。新規開業して採算ラインの来患数に達するまで何年かかるか、その間の持ち出しと、一方で若干の患者離れがあったとしても、買収後初年度から利益が出るとしたら営業権の対価を支払ったとしても、時間を買うことができれば成功である。

 承継する看護師、医療スタッフの退職金のことも考慮しておく必要がある。採用時に退職金制度無しで雇用している場合は問題ない。また、引き継ぐ従業員の教育練度、質も重要なポイントとなる。

 一人医師医療法人の買い手が個人医師である場合は営業権の償却ができないのでスキームに工夫を要する。営業権を支払うのは、買い主であるから、買収対象となった医療法人のB/Sに資産計上することはできないのである。また、理事長の退職金で赤字をつくって純資産を圧縮して買いやすくするという方法もある。

 個人医師が買い取る場合のスキームは特にこの点に工夫を要する。長年勤務してきた看護師等の退職金の引き継ぎ処理も問題となる。

 院長交代を期に患者が極力散らないように工夫することも重要なポイントである。

富士山・冬

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