Ⅳ 自社株引下げ対策事例

自社株引下げ対策事例

 自社株を取り巻く環境分析が出来たら、自社株のどこが問題か見えてきます。業績のいい中小・中堅会社の多くは中会社の中か大会社です。優良会社で問題になるのは、高株価故に相続税が払えるかという心配です。ではなぜ、高株価になるかその仕組みから見ていきましょう。

 前号で類似業種比準価額と純資産価額の組み合わせで株価が決まること、更に会社規模が大きくなるほど類似業種比準価額の占めるウエイトが大きくなることを説明しました。再度ここにその算式を掲げます。

原則評価


 これを見てわかるように、類似業種比準価額は年配当額、年利益額、簿価純資産の三要素で比準することになっており、なかでも年利益額が3倍に加重されています。ここから株価を下げる対策のポイントが見えてきます。


【類似業種比準価額方式】

1.年配当額対策 
 毎期の配当額はできるだけ抑え、会社の記念配当をする時に集中的に出すようにします。記念配当は類似業種比準価額算定の際は除かれることになっているからです。中小企業では配当率ではなく配当額で配当を決めます。一株当たりの配当額が高くなっており上場会社と比準したときに株価を押し上げていることがありますから要注意です。

2.年利益額対策
  年利益額を一時的に抑えることができれば、株価の引き下げに大きく影響します。これは株式移譲の計画と併せて考える必要があります。事業承継に時間的余裕がある会社ではリーマンショック時のように業績が大きく悪化し株価が下がったチャンスに株式の移譲を考えるのもいいでしょう。
  利益引き下げの対策としては以下のような方法が考えられますが、決算期、株式移譲のタイミングと併せて1~2期で集中的にやる方が効果的です。

含み損を抱えている土地を思いきって処分する
⇒キャッシュフローの改善にも貢献し、財務体質の強化にもなります。

不良在庫、不良債権の償却。B/Sのスリム化を図る

損金性の高い生命保険を活用して課税の繰り延べをする
⇒損金算入をしながら役員退職金の原資を貯めることもできます。

高収益部門を後継者の会社に営業譲渡、本体会社の株価高騰を抑制
⇒残った本体会社の業種を変えることで株価を下げることもできます。

役員退職金を支給して利益を抑える
⇒役員退職の時期、役員退職金規定の整備、退職後の会社の資金繰り、他の相続対策とも併せて総合的に検討する必要があります。

役員報酬の増額
⇒会社の内部留保の充実を優先して役員報酬を抑えているケースがありますが、役員退職金を視野に入れる時期が近づいてくると適正報酬を取っておかないと、過大退職金と認定される懸念が生じてきます。

レバレッジドリースを活用して利益を抑える
⇒この方法は効果がある一方、多額の資金が長期にわたって拘束される、外貨建ての場合は為替リスクを考える必要がある等のデメリットもありますから慎重に取り組むべきでしょう。

3.簿価純資産額対策
 中小・中堅会社のなかには、地方税の均等割を意識して過小資本の会社が見受けられます。この場合、内部留保が充実した会社では、その比準値も高くなってしまいます。含み損を抱えた土地の売却、不良債権、不良在庫の償却等を通じて内部留保もスリム化した後、新株の発行増資を行い役員、従業員に放出することでオーナーの持ち株割合を下げる対策も効果的でしょう。なお、この場合、中堅規模で会社の財務内容を開示できる環境が整っていることが前提条件となります。
 類似業種比準価額は上場会社の株価と比準するわけですから、分類される業種や株価水準にも大きく影響されます。2008年9月15日のリーマンショック以来、2008年の年末から2009年の年初にかけて日経平均株価は8,000円割れし、2012年12月、安倍内閣が金融緩和を打ち出す前後から10,000円を越え、2015年5月に1ドル124円台の円安の後20,841までいき、現在17,374円(11/11)で推移しています。このように上場株価は7~8年で大きく推移していますから事業承継を長期的に考えることができるケースでは、上場会社の株価水準の低いときに対策を打つことも大切でしょう。

【純資産価額方式】

 貸借対照表の資産総額から負債総額を差し引いた価額を純資産とします。その際「資産」は相続税の評価額によることとされていますから平成2年のバブル崩壊より相当以前から土地、借地権及び有価証券を所有している会社では含み益が出る場合があります。逆に土地の値下がり等で含み損を抱えている場合は、損切りすることで株価を下げることも可能です。
 土地は借入の際の担保に必要と、こだわっている会社もありますが、最近では会社の信用度はスコアリングで評価します。定性評価と定量評価があります。定量評価では収益力、安全性、返済能力等で評価しますが、最もウエイトが大きいのは返済能力です。簡単にいえば営業利益プラス減価償却費で借入金を何年で返せるか、ここを重視します。株価対策も大切ですが、対策後はスコアリングで高い評価が得られるようにしていくことがより大切です。
       
4.株価引き下げ後の株式移譲
 株価引き下げ後は株式を後継者・相続人に移譲することで先代の持ち分を減らします。株価対策を行った株式の相続税評価額は時価より低くなるケースが多いので株式の移譲は基本的に贈与で行います。譲渡では先代の保有する株式が現預金に変わるだけで相続財産は減りません。相続人は贈与税を用意する必要がありますが、一時的に会社から借り入れ、後日、贈与を受けた株式の一部を会社に譲渡して返済します。この場合、本体会社に売却すると取得価額と譲渡価額の差額がみなし配当所得となりますので、グループ会社がある場合は、発行会社以外の会社へ売却します。
 相続まで時間があり、業績が安定した高収益会社の場合は、毎年の留保利益が積み上がり10年後の株価が倍になるようなケースもあります。このようなケースでは相続時精算課税制度を使って思い切って株式の移譲を実行します。2,500万円までは非課税ですし、これを超える額に対しては20%の贈与税ですみます。但し相続時に持ち戻し計算をして精算しますので、メリットは相続時までの株価の値上がり益に対する相続税相当額が節税になるという点に終始します。払った贈与税は相続税の前払いとして差し引かれます。後継者が実質的に事業を承継して経営に従事しているような場合、後継者の経営努力で留保した利益が相続財産として課税されるといった事態は避けられます。株価が将来値下がりした場合は逆に不利に働きます。このスキームは会社の実態をよく分析した上でリスク分散も考慮して実行すべきでしょう。

 経済環境の激変でビジネスモデルの変更を余儀なくされるケースもあります。後継者が力をつけ、先代は健康だが交代してもいいと考えられるときは、生前に退職金を取って非常勤取締役として後継者を支援することもできます。この場合も株価が下げられるチャンスです。会社は退職金で一時的に大きな損金を生じることになりますが、時間をかけて周到な準備をしておくべきでしょう。

①役員退職金規程の整備
②生命保険あるいは内部留保による退職金原資の準備
③退職後の組織体制の確立
等々です。

株価が下がった後の対応は上記と同様です。

立冬
11月7日は立冬
秋暮れて厳しい季節がやってきます
CALENDAR
07 | 2018/08 | 09
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
PROFILE

税理士法人 はやぶさ

Author:税理士法人 はやぶさ
税理士法人 はやぶさ 兵庫県 神戸市 中央区の会計事務所
〒650-0033
兵庫県神戸市中央区江戸町98番地の1
東町・江戸町ビル2階
Tel.(078)325-2660
Email:
info[at]z-hayabusa.or.jp
(※[at]部分を@に変えてメールをお送りください。)

RECENT ARTICLE
ARCHIVES
CATEGORIES
SEARCH
LINKS
MOBILE
QR