相続財産を一切取得しないなら考えておくべきこと

被相続人の財産が債務超過でなくても、
相続人の皆さまで遺産分割をする際、
中には財産を相続しないご決断をされる方がいらっしゃいます。

財産を分けることで家族と揉めたくない、
生活が安定しているので他のご兄弟に譲りたい、
被相続人から生前に十分な贈与を受けた、

など様々な理由から、そうされるのだと思います。

こういったご相続に立ち会ったときは、
本当にご家族のご関係がよいので、
被相続人のご逝去という悲しい状況ではあるのですが、
相続人の皆さまは、前向きにお考えで、
ご家族で協力しあっていらっしゃいます。

そのようなご関係をみると、
なんだか私達が力をいただいているように感じたりします。

ただ、
骨肉の相続争いを見てきて、同じように争いに巻き込まれたくない、
プラスの財産だけでなくマイナスの財産もあるので、関わりたくない、

などの理由で
財産を相続しない、

というご決断をされる方もいらっしゃいます。

このような場合、遺産分割協議で放棄するだけで良いのでしょうか?

結論としては、家庭裁判所に相続放棄の申立てをしておいた方が良い
というのが私の考えです。

理由は、借金などのマイナスの財産がある場合、法的に承継しなくて良くなるからです。

遺産分割協議書で財産を一切相続しない、と表明したとしても、
正式な相続放棄とならないため、
法定相続分に応じて、借金などのマイナスの財産を引き継ぐことになってしまいます。

あとで想定していないことに巻き込まれたくなければ、
相続放棄の申立てもお考えください。

税理士法人はやぶさ 税理士 杉浦 文彦

遺留分制度に関する見直し

遺留分制度は、相続人が被相続人の遺産を最低限確保するために設けられた制度です。
これにより兄弟姉妹以外の相続人は、遺産の一定割合を取得できる権利が保障されています。

この遺留分制度について民法の改正がされています。

ではどんな改正があったのでしょうか?
注目は次の2点ではないでしょうか。

1.遺留分減殺請求の金銭債権化
改正前は、遺留分に関する権利を行使すると、
遺留分を侵害する遺贈または贈与の全部または一部が無効になり、
無効とされた部分に関する権利が遺留分権利者に移転することとされていました。
しかし、遺留分の権利行使により相続財産が共有状態になってしまうことで、
事業承継に支障が生じることもありました。
そこで今般の改正により、遺留分侵害の原因である遺贈または贈与の効力を維持することで、相続財産の共有化状態を防止し、
受遺者または受贈者に遺留分侵害額に相当する金銭の支払い義務を負わせました。

この結果、税務的な影響では、金銭の支払いに代えて何らかの財産を提供した場合、
譲渡所得として課税されることになりました。
確定申告を忘れないようにしてください。

2.特別受益にあたる生前贈与は、相続開始前10年以内のものに限定
改正前は、相続人に対して生前贈与がされた場合は、
期間を問わず、その全てが遺留分を算定するための計算対象とされていました。
しかし、何十年にもわたる生前贈与が遺留分の計算対象とされると、
第三者の受遺者が予想外の請求を受けることになりかねません。
そこで、今般の改正により相続開始前10年間にされた贈与に限り、
遺留分を算定するための計算対象とすることとされました。

この改正は、令和元年7月1日以後に開始した相続に係る遺留分侵害額の請求があった場合について適用されます。

税理士法人はやぶさ 税理士 杉浦 文彦

遺言書の見直しも?配偶者居住権の検討は必須

税理士は年間で36時間の研修受講義務が課せられています。
コロナ禍の影響で研修形式も動画受講となっており、
わざわざ会場に行くことなく講座を受けることができるのは大変ありがたいと感じました。
コロナ終息後もこのような形式での講座スタイルが主流になっていくのでしょうか。

ただ、気になることも。
画面に資料を映し出してくれるのはありがたいのですが、
講師が資料をスクロールするのが画面上でも写し出されるため目が回る感覚になったのと、
スクロール時のマウスの操作音が大変気になりました。
こちらは今後改善されていくのでしょうか。

さて今回は、改正民法の目玉!といってもいい「配偶者居住権」について実務にどんな影響を与えるか考えてみました。

ここでは詳しい内容は省きますが、
配偶者居住権は、被相続人の配偶者に、終身又は一定期間、住まいの使用等を認める権利のことをいいます。
この権利を遺産分割又は遺言等によって、配偶者が取得できるようになりました。

旧民法下では、配偶者が住まいを確保するためには、
①居住建物を相続する、②居住建物の所有権を取得した者から賃借する、という方法によっていました。
しかし、居住建物を相続すると、建物の価額によっては、他の財産を相続できなくなったり、賃借は、建物所有者が貸してくれなければ実現できない、といった問題がありました。

そこで配偶者の生活基盤確保のために、配偶者の居住権を低い価額で確保できるようにしたのが、今回の民法改正です。

ここで私が注目したのは、下記の4点です。
① 居住建物を被相続人が配偶者以外の者と共有している場合は、配偶者居住権を成立させることができないこと(民法1028条1項但書)
② 「相続させる」旨の遺言では配偶者居住権を取得できないこと(民法1028条1項2号)
③ 令和2年4月1日より前に作成した遺言書に配偶者居住権の記載があった場合、仮に令和2年4月1日以降に遺言者が死亡したとしても、配偶者居住権の規定は適用されないこと
④ 配偶者死亡の場合、権利は消滅するため、相続の対象とならないこと(民法1036条の準用する597条3項)


配偶者居住権は、上記④のとおり、配偶者死亡の場合は権利が消滅し、財産評価上もその価額は零円になり相続税の課税はされません。
これがあるため、今後配偶者が存命中の相続にあっては、必ずこの配偶者居住権を取得するか否かを検討する必要がでてきました。
しかし、配偶者が存命中に家を売らないといけないようなこともでてきます。
その際のデメリットもよく考えておく必要もあります。

既に遺言書を作成している方については、令和2年4月1日以前に作成されたものについて配偶者居住権の規定は適用されないため、遺言内容の見直しも必要でしょう。

作成にあたっては配偶者居住権について「相続させる」と表現するのではなく、「遺贈する」と表現しないといけないなど、注意も必要です。

そもそも建物が共有状態のときは共有状態を解消したほうが良いかも検討していかないといけません。

配偶者居住権を取得するかどうかは別にして、
専門家である私達税理士は、ご相続に関わる方々からしっかりとお考えをお聞きし、
そのお気持ちを汲み取り、判断の材料をしっかり提供していかなければならないですね。


税理士法人はやぶさ 税理士 杉浦 文彦

遺留分侵害額請求の合意時の相続税申告の期限

今回は相続のお話です。

先日、相続税申告のご相談で、
遺留分侵害額の請求に係る合意がまとまったときの相続税の申告期限がいつになるのか、
というご質問をいただきました。

以下の事例のような場合の相続税の申告期限がいつになるのでしょうか。

(事例)
被相続人である甲が生前に遺言書を作成していました。
その内容は、甲の遺産を相続人Aに全て相続させる、というものでした。
甲にはもう一人相続人Bがおり、遺留分の侵害を受けたことからBがAに対して遺留分侵害額請求を起こしました。
両者の合意は相続の開始があったことを知った日の翌日から10ケ月以内にできませんでした。

(回答)
この場合、AおよびBの相続税の申告期限及び手続は以下のようになると考えられます。
(Aの場合)
遺留分侵害額請求を受けていますが合意ができていないため、
遺言書の内容のとおりAが全て相続したものとして、一旦10ケ月以内に相続税の申告書を提出し、納付を済ませます。
その後、遺留分侵害額の請求に対する合意により支払うべき金銭の額が確定したときに、
Aは財産が減ることになりますので、
その事由が生じたことを知った日の翌日から4ケ月以内に限り、
税金の還付手続きである「更正の請求」をすることができます(相法32①)。

(Bの場合)
Bは遺言書の内容では一切財産を相続できなかったため、相続税の期限内申告書を提出することができません。
よって、遺留分侵害額請求に係る合意により受け取るべき金銭の額が確定したときに、
Bは新たに財産を取得することになりますので、期限後申告書を提出することができます(相法30①)。

この場合の期限後申告書の提出期限は特に定められていませんが、
Aが税金の還付手続きをした場合に、Bが何も手続きをしなかったときは、税務署からBに相続税の納税を督促してくることから、
Bは相続税の更正の請求期限である4カ月以内に合わせて期限後申告の提出及び納税手続きをした方がよいでしょう。

さて、ここで注目していただきたいのが更正の請求も期限後申告もどちらも「できる」規定となっている点です。
これは、どういうことかというと、合意後でもAが更正の請求をしなければ、Bは申告をしなくてもよい、ということを意味しています。
では、Aが納め過ぎた相続税はどうするのか?という疑問が生じますが、BがAにその分を金銭で支払えば良いということになります。
課税庁としては入ってくる税金に変わりないため、関知しませんよ、ということなのですね。


税理士法人はやぶさ 税理士 杉浦 文彦

平成30年税制改正大綱(事業承継税制)


今週12月14日に自民党から税制大綱が発表されました。

従前から、「事業承継税制」はありましたが、あまり使い勝手が良いものとはいえるものではなかったのでしょう。
経産省所管の認定実績は約1500件(H20.4~H28.3)でした。
認定により経営者の事業戦略や資本政策に制約が入ることもネックだったのではないかと思います。

大綱上の事業承継税制(P45以下)の概要についての、個人的なポイントは以下の通りです。   
 
自民党/平成30年税制改正大綱

1.非上場株式の納税猶予制度が「創設」される
  
  前回の制度とは異なる、新しい制度として生まれる。。。
  ということでしょうか?
  今後の法案や細かい法律の公表を見守りましょう。

2.株式評価額(全額、従前80%)相当の納税猶予
 
  一定の要件も、詳細大綱本文に触れられています。
  興味のある方はご確認ください。
  雇用確保要件にもある程度の配慮が感じられます。

3.認定支援機関の「指導及び助言」が必要
  
  特例認定計画(仮称)を事前にまとめる必要があります。
  弊社も認定支援機関として、様々な支援活動を行っております。

同族承継以外の将来の選択肢(M&Aや非同族承継、IPO等の可能性)もしっかり検討した上で、納税猶予を選択する必要があると感じております。
経営者様におかれましては、事業や後継者様、ご本人様がどのように成長発展してゆきたいか、この点を優先してお考えいただきたいと存じます。
弊社でもこのような経営者様のビジョンを共有し、進化のお手伝いをしながら、共に前に進んでゆきたいと思います。

社員税理士 福岡
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